「おめでとう、フローラさん」
フローラはリングを持ち帰ったゼヒュロスの心を疑っていた。
今目の前にいる女性・・・ビアンカに対する彼の眼差し、そして声から、彼女をどれだけ大事に思っているか分かってしまったからだ。
なのにゼヒュロスはビアンカではなく己を選んだ。
嬉しいと思う。だが、嬉しいと感じる反面辛かった。
彼の気持ちを疑ったこと、そしてビアンカ自身の気持ち・・・。
「御免なさい・・・」
ビアンカの目が丸く開く。
「やだな〜、こっちがオメデトウって言ってるのに、御免なさいなんて。
そういう時は"ありがとう"って言うものよ?
これから花嫁になる人が暗い顔してどうするの?
さっきまでの嬉しそうな顔はどこ行ったのよ」
「だって・・・私のしたことは結局ビアンカさんを傷つけただけで・・・・。
私・・・なんてお詫びしたら良いのか・・・」
あまりの情けなさに涙が出そうになる。
目を見て話さなければ・・・そう思うのに前を向けない。
「あのね、フローラさん、よく聞いてくれる?
確かに私もゼファーを好きよ?幼馴染としてでなく、1人の男として好きだと思ったわ。
だから辛くないと言ったら嘘になるけど・・・。
私を引きとめたフローラさんを怨む気にはなれないの。
確かにゼファーは私を大事に思ってくれてるから、貴方が勘違いしてしまったのも分かるもの」
そこまで言って、ビアンカは一息つく。
「本当に謝らないといけないのは私の方ね。
私はゼファーの自分に対する気持ちを分かっていた。
あいつね、あんな生活でしょ?友人と言える人間って本当に少ないのよ。
あいつが私を大事に思ってるのは、数少ない友人だから。お父様のことも私は知ってるしね。もう一つ言うと、あいつにフローラさんのこと聞いたことあるんだけどさ、そしたらすごく幸せそうにしてたのよ」
「ゼヒュロスさんが?」
「そう。だからね、本当に謝らないといけないのは私なの。黙ってて御免なさい」
「え?あ・・・え?」
突然のビアンカの告白に、フローラの頭はついていけない。
「それからさ、もしゼファーが私を選んでても、フローラさんは私を祝福してくれたでしょ?フローラさんだってあいつを好きなのにね」
「それは当然ですわ!」
「じゃあ、私がどんな気持ちで"おめでとう"って言ってるかわかるわよね?」
嫉妬する気持ちは確かにある。しかし祝福したい気持ちも本当なのだ。
「おめでとう、フローラさん」
先ほどの言葉を繰り返し紡ぐ。
その声はとても優しかった。
「はい・・・ビアンカさん・・・ありがとうございます。私、とても幸せです」
ありがとう・・・ありがとう、ビアンカさん・・・。
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個人的に、このお題が一番厄介だったんじゃぁないかと・・・(汗)
絵や文章のスキル以前に、「ありがとう」をお題に考えることが大変でした。
主フロ間で「ありがとう」は、些細なことかミルドラースを倒した後しか思いつかないんですよね〜。
なので結局主人公の出番のないお話にしてしまいました。
あんぎゃー、すみません(汗)
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