2.噂

 ここはポートセルミ、港の規模世界一を誇る都である。
ルドマンから舟の使用許可を得たゼヒュロスは、ルーラですぐにポートセルミへ向かった。
義父からの連絡が届いているか確認した後、いつものように酒場へ向かう。

 舟に乗る前に酒場へ行こうと促されて、フローラは不思議そうな顔をした。
「酒場・・・ですか?こんな昼間から?あなたってお酒好きな方だったのですね・・・」
驚いたような、呆れたような顔をして言う妻に、ゼヒュロスは苦笑した。
「違うよ。別にお酒を飲みたいから行くんじゃないんだ」
誤解を解くため、初めて行くあてのない旅をするフローラに説明する。
「僕たちには目標がある。勇者を探して母を助けるという目標がね。でも、そうは言っても肝心の勇者はどこにいる?母はどこ?」
「それは・・・分かりませんわ・・・」
「うん。だからね、少しでも手がかりがないか、僕は町で色んな話を聞きながら旅をしてるんだ。それには酒場や宿屋が一番いい。だからなんだよ」
「酒場や宿屋には人が集まってるから、色々な噂話を聞けるから、そういうことなのですね」
「そう」
説明を聞いて、フローラは感心したように頷く。
「僕が酒飲みじゃなくて安心した?もしかして、酒飲みだったら僕は折角結婚したばかりの奥さんに愛想つかされていたのかな?」
「え??いやですわ、ゼヒュロスさんったら!!そんなことで私は愛想をつかしたりしませんわ!絶対です!!」
ムキになって言う姿が可愛い。
「あはは、そういえばフローラの噂を聞いたこともあったな。シスターとして最高の女性・・・おしとやかで美しい・・・。そんな話を聞いた時は、こんな可愛い姿は想像出来なかったな」
「もう、あなたったら、それは誉めてるんですか?貶してるんですか?」
「勿論誉めてるんだよ」
そう言ってゼヒュロスは妻の手を取った。
彼女の噂を聞いた時は、自分には関わりのない深層の令嬢だと思っていた。
こんなに表情豊かで、相手を真っ直ぐ見つめる瞳を持っているとは思わなかった。
こんなにも愛しいと思う存在になるとも思っていなかった。
まだお互い出会って間もない・・・。きっとこれからも色んなフローラを知ることになるのだろう。

 二人の旅はまだ始まったばかり・・・。


「噂」を考えてて思ったこと。
こういうゲームって噂だらけよね
町の人の話を聞いてゲームを進めるわけじゃないっすか。
で、その殆どは「〜らしい」で、主人公がそれを確かめながら進むんだよな〜と。
なのでそれを意識して書いてみました。
微妙にお題とズレてる感じがしなくもないけど・・・。まぁ見逃してください。