4.贈り物

 ルドマン家の一人娘の盛大な結婚式が終わった。
そのあくる朝、新婚夫婦であるゼヒュロスとフローラはルドマンのもとに訪れた。
理由は、「フローラも夫と共に旅に行く」その許可を求める為である。
ゼヒュロスの傍にいたい。一緒に旅をしたいというフローラの気持ちはもっともなものだった。

しかし・・・

「夫の支えになりたいという気持ちは分かる。しかしだな、フローラ。お前が彼について行っても、彼の負担になるだけだろう。町の外には多くのモンスターが溢れている。そのモンスターにお前が襲われないように、彼は細心の注意を払わなくてはならないんだぞ?おまえ自身だって旅の経験もまともにないだろう?このサラボナから修道院に行った時とは状況が違うんだぞ」
 ルドマンの返事は当然の如く "行ってはならない" だった。
「お父様のおっしゃる通りかもしれません。私も負担になるくらいならこの家で待っていたほうが良いのでは?そう考えました。けど・・・けどどうしても辛かったのです。ゼヒュロスさんが危険な思いをしているのに、ただ私は待ってるだけなんて・・・」
「お義父さん、僕もフローラには待っていてもらうつもりでした。危険な、いつ終わるのかも分からない旅に連れて行くことは出来ないと。でもフローラが一緒に行きたいと言ってくれて、正直嬉しかったのです。不安はお互いあります。けれども、それを支えあうことが出来るのが夫婦ではないのでしょうか?僕からもお願いします。お義父さん」
 渋っても食い下がる娘の言葉に、どう説得しようにも無理な様子を感じとって、ルドマンは溜息をついた。
大事な娘を危険にさらしたくはないが、婿になる男の事情を二の次にして"2つのリング"という条件を出したのも己だ。
その婿からも『お願いします』と言われてはどうしようもない。
「・・・条件がある。実は山奥の村の西の小島に小さな祠があるんだが、その祠の中に置いてある壷の様子をゼヒュロスに見てきてもらおうと思っていたのだ。そこへ二人で行き、もしフローラがゼヒュロスに迷惑をかけずにこれたら二人で旅立つのを許そう。どうだね?フローラ」
 フローラにとっては思いがけない嬉しい言葉だった。
条件付きとはいえ、許可が下りたことには変わりない。
「ありがとうございます。お父様!きっと、きっとゼヒュロスさんのお手伝いをして帰ってきますわ」
「決して無理はするなよ。おお、そうだフローラ、出掛ける前に二階のお前の部屋へ寄っていきなさい。母さんが待っているはずだ」
ルドマンに礼を言った後、『何故お母様が?』と疑問に思いつつも、フローラは黙って二階へと足を運んだ。


 フローラの部屋はルドマンの屋敷の中で一番日当たりが良い。
大きな窓から、太陽の光が溢れんばかりに注がれていた。
その部屋の中央に置かれたテーブルのところに、フローラの母はいた。
「いらっしゃい、フローラ。あなたはやはりゼヒュロスさんについて行くことにしたのかしら?」
「お母様・・・やはりって」
近寄ってみて、テーブルの上に置かれたものに気付いてフローラは目を見開いた。
『鱗の盾』と見たことのない洋服、それに武器もある。
この武器は『モーニングスター』というものだったろうか?
「これは・・・『身かわしの服』に『鱗の盾』、『モーニングスター』ですね」
武器・防具に詳しいゼヒュロスが言い当てた。
「そうよ。フローラが旅に出たいと言い出すだろうと思って、急いで用意したの。あの人はあまり良い顔をしなかったけどね」
あっさり、にこやかに話す母親に、フローラもゼヒュロスもただただ驚くしかない。
「あの人に言って、揃えられる最高のものを用意したつもりよ?是非使って頂戴ね」


 流石あの父、ルドマンの妻になった人だと・・・二人は納得するしかなかった。


うわ〜、セリフばっかりのしょぼい文章になってしまいました。
すみません。すみません(汗)

 贈り物といえば旅の途中に貰うアイテムやお金を思い出しますが、思えばフローラの初期装備もフローラが買ったものではないだろうと・・・。
モーニングスターに関する記述も入れる予定だったのですが、これは3人ともどんな武器か知ってるだろうと思ったので省きました。
分かってても口にしちゃう主人公もいいかな?とは思ったんですけどね。
ヘタレになるので黙らせましたよ(笑)
あ、うちの主人公は感情的にはフローラについてきてほしいけど、理性的にそれはいけないって思ってるので、当初はルドマン説得はフローラだけの予定でした。
(主人公は話を振られたら答えるだけ)
なのに書いてたら必然的に助け舟出してました。
しかも「お願いします」とまで言っちゃって・・・。
どうやらフローラの必死な姿を見ていたら、傍観者ではいられないようです(笑)
どこまで妻にメロメロなんだ。うちの主人公。