炎の景色

紅い空・・・紅い大地・・・・・


「デュー!!!」
その声で後ろを振り向くと、敵を切る恋人の姿があった。
どうやら自分を狙う敵に、迂闊にも気付かなかったらしい。
「ありがとう、アイラ」
二人とも酷い姿だ。
おびただしい返り血の量が、現状の悲惨さを物語っている。
剣に付いた人の血が重く、剣技に長けた二人ですら一撃一撃を振るうことがだんだんと辛いものになっていた。
今日のこの戦いだけで、どれだけの人間を切ったのか判らない。
二人とも肩で息をし、いつ倒れてもおかしくない状態だった。

だから・・・先程のアイラの一撃が、敵の息の根を止めることが出来なかったのも無理はない。

「ぐあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「アイラ!?」
アイラが叫び、その場に崩れ落ちる。
アイラの背後に、殺したと思っていた敵が剣を握りしめてこちらを見ていた。
敵の体勢が整う前に、素早く駆け寄り止めを刺す。
「アイラ!!」
鮮血が彼女の足を彩ってゆく。
両足を切られていた。特に左足は酷いもので、骨まで達しているように見えた。
致命傷ではないが、これまでの怪我と疲労に加えこの出血では、いつ死神がアイラを連れ去ってもおかしくない。
己の腰布を外し止血するが、これは気休めにしかならなかった。
「くそっ!!」
死なれたくない、死なせやしない。心の底から切望し、手に入れた女性だった。
ただ死ぬのが惜しくて、無駄に生きていた己が初めて手に入れた、生きる理由・・・。大切な光りだった。
その光りが今、真っ赤に染まり、輝きを失おうとしている。
「絶対死なせない。必ず守るよ、アイラ」





 ―今、一人の若者が恋人を抱き森の中へと消えていった。

後に「バーハラの悲劇」と呼ばれる、この虐殺とも言える戦いの終りに、森が犠牲になることは知る由も無く・・・。


END


 すみません。滅茶苦茶真面目・・・つーか暗いですね。
【真っ赤】で最初に思いついたのは「表情」だったのですが、それにはそそられなかったので他のものを考えることにしました。
で、出てきてそそられたのが「血」「炎」の赤。

 わざと「殺す」とか、「虐殺」とかの言葉を使用し、「攻撃」とか「倒す」とかのゲームらしい表現を避けて書いたので、人によっては受け付けないかもしれません。が。
戦争を舞台にしておきながら、死を誤魔化す文にはしたくなかったのです。

 あ、最初は「妻」と書いてたのに「恋人」にしました。
子供がいて、どんだけラブラブでも私の頭の中では二人は夫婦ではないようです。
知らんかった・・・。