ある雪山にて

「帰り道がわかんなくなっちゃった。オイラとしたことが失敗したなぁ。」

ここは、シレジアの雪降る山あい。現地に住むものでも進むことはない場所。
デューは昼間の戦闘中に自慢の目で、山あいから攻撃を加えてくる伏兵を見つけ、単独で追いかけて、そして追い詰めたと思った瞬間に足元が崩れ、意識を失い…迷った…

夜が深まり、吹雪はやむことなく吹き続け、容赦なく体温を奪い、視界はまるでない。

「洞穴を見つけられたから吹雪は避けられるし、火もこうやって熾せるし、凍死だけはなんとか避けられそうだけど、このまま吹雪がやまなかったら…間違いなく餓死だね。」

こんな状況でもいつもの軽口を叩く。
一人きりなぶんだけ冗談でも言わないとやってられないのかどうかはわからない。

「餓死とか考えるのも久しぶりだ…ジャムカに助けられて、シグルドのところに居ついて、食べ物には困らなかったし…」
「こうやって一人になるのも何年ぶりだろ?アイラに初めて会ってからは、ずーっとアイラの横から離れなかったもんなぁ。」

一度考えてしまったら手遅れで、頭にアイラの顔が浮かび、離れることはなくなった。

「やっぱ心配してる…よね?」

「いままで一人でやってきたっていうのに、変なの。」
一人には慣れていたはずなのに、人が恋しい。過去に、一人になったときから捨てて、忘れたはずの感情を思い出してしまい。とまどう。

「でも、こんなオイラも嫌じゃないかな?」
デューの中では、もう、答えがでていた。
やっと捕まえることのできた、愛する人、愛してくれる人を悲しませたくない。

「さぁてと…泣かれる前に帰らなくちゃね。」
「泣いた顔もきれいだけど、涙は苦手だし、泣いてるアイラはできれば見たくないもんね。」

そう呟き、とても穏やかに、そして当然のことの決心が今更ついたことに笑う。

洞穴から外をうかがうと、
さっきまでの吹雪が幻だったかのように、まるでデューの気持ちを表すかのように。
すっかり吹雪はやんでいたのだった。

「運命の女神様ってのもオイラの味方みたいだね」
にやりと笑い、歩き出そうとした瞬間…
聞こえるはずのない、一番聞きたい声が聞こえた気がした…


「デューーーーー!!」

聞き違いなんてするわけのない声、間違いなく自分を愛してくれる人の声…
あわてて声の聞こえた方向を探す。

「デュー!!」

今度はすぐ近くで聞こえた。

「アイラ!!」
デューも愛する人の名前を叫ぶ。

「デュー!そっちか!?」

「うん!ここにいるよ!!」

ほどなくして二人は出会い、体を重ねる。

「よかった…やっと会えた…」
安心したせいか涙を浮かべ、力が抜けていくのがわかる。

「さっき決めたばっかなのに…もう泣かせちゃったか…」
デューはそんなアイラの体をきつく抱きしめ、そっと唇を重ねる。


「会えるよ。だってオイラは、ずっと一緒にいるって決めたから…」

唇を離してから…
自分のため、アイラのため、永遠に変わることはないと、誓いの言葉を口にする。

「アイラとずっとずっと…一緒にいるよ。」

(やっぱりアイラは暖かいなぁ…)

お互いに凍えた身体だけど、アイラの体温が心地よかった…


END

 by 高屋 様
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↓邑瀬コメント↓
 一人に慣れていたというデューにトキメキで御座います♪
そして、アイラのことを思い出してそればっかりになった時、一体どんなアイラを思っていたのか気になります。
きっとデューにしか見せないアイラですよね・・・ふふふ・・・(悦)

 体の暖かさを通して、孤独を癒してくれた心の暖かさを感じました♪