意外な結果

 とんでもないことになった・・・と思う。いや、実際にとんでもないことになってるんだけど。
あいつはフローラさんと結婚をしたくってリングを取りにいってたのに・・・。

 溜息が一つ。ここはルドマン家の別荘である。花嫁騒動に巻き込まれたビアンカが通された場所だった。
辺りは闇に包まれ、お休みなさいとルドマン家のメイドに挨拶されたが、まだビアンカにとっては活動時間。寝付けるはずもなく、夜風に当たって頭の中を整理していた。

 「軽率・・・だったのかなぁ」
 今の生活に不満があったわけではないが、『冒険』に心惹かれた。あいつの為・・・という気持ちに偽りはないが、一番の理由は「家を離れて冒険したかった」なのかもしれない。それの結果がこれとは・・・人生何が起こるか解らないものである。
「年下は趣味じゃないのに」
本音が虚しく夜に消えた・・・。

 夜が明け、ルドマン宅に皆が集まった。
ルドマンが「心は決まったか」と促す。緊張と静寂が訪れた。

 夕べあいつが尋ねて来た時、何度も「実は・・・」と云いたくなった。しかしそれを云うとあいつの自尊心を傷つけそうで云えなかった。
どうしようかと思ったが、あいつが結婚したいのはフローラさんだとわかりきってるのだ。わざわざ私が断らなくても、フローラさんと結ばれるんだから良いのだろう。
今はただ、あいつがフローラさんへの気持ちをはっきり言うだけなのだ。

 「待って下さい!」
静寂は意外な相手から破られた。
「御免なさい・・・。私、すごく卑怯でした・・・」
「フローラ!?どうしたんだ、一体・・・」
意外な相手・・・それはフローラさん。ルドマンさんが娘の様子におろおろしている。
皆の視線が彼女に集まる。彼女は小さく震えて、俯いていた。
「私、ビアンカさんの気持ち・・・なんてことを言って、優しいふりをしてました。だけど・・・だけど本当は違うんです!本当は私、結婚したくなくって!!ア・アンディが好きで!!私・・・私・・・御免なさい・・・」
 部屋に集まった、全ての人がフローラさんの告白に唖然としている。
フローラさんは耐え切れずに泣き崩れてしまった。

 どれくらい時間が経ったのだろう。誰かが「では・・・」と言葉を発した。
それまでフローラさんに集まっていた視線が、私に集まる。
やばい。
「えっと・・・」
あいつと目が合う。あいつの表情からは、何も伺えない。
「御免ねvv いい男に成長したとは思うけど、異性としては見れないのvv」


 その日の内に、ルドマンに同情され、宝を託された青年がサラボナを出発した。
「いい男に育ったんだから、その内いい出会いもあるわよ!」
と、励まされていたが、モンスターに囲まれ、安定した生活のない彼に幸福が訪れるかどうか・・・定かではない。


END




あとがき


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